賢人機関欧州支部。
かつて欧州星組で司令を務めたかえでは現在も其処を拠点としていた。
足早に廊下を歩く。
焦りが彼女を急がせる。
最近、嫌な夢を見る。
日本の帝都に居る姉、あやめの夢。
自分の前を姉が歩いている。
呼べば立ち止まり振り返る。
いつもの優しい笑顔でこちらに笑いかけてくれる。
ふと、彼女の後ろに目をやると誰かが姉に刃を向けていた。
「危ない!姉さんっ!!」
思わず叫ぶが時既に遅く。
姉が崩れ落ちるのを目の当たりにして。
そこで、目が覚める。
そんな夢が一週間も続いていた。
帝都に何かあるのだろうか。
姉さん、無事よね・・。
姉が優秀である事は誰よりも自分が一番知っている。
だからこそ、無事だと信じたい。
まさかと思い、帝都と連絡を取ろうとした。
だが、返ってきた答えは『帝都は混乱、現在詳細確認中』
何らかの詳細が分かれば教えてくれるよう頼んで部屋を出る。
その足で自室へ戻り、道着に着替えて鍛錬場へ向かう。
体を動かさなければ落ち着かない。
何時間そうして動いていただろうか。
汗だくになっているのに動きを止めることが出来ない。
何も考えないようにしていなければ自分を保てない気がする。
そんな空気の張り詰めた鍛錬場の扉が不意に開かれた。
「カエデ!帝都から電報だ!」
同僚がこちらに走ってきてかえでに一通の電報を渡す。
『藤枝あやめ、帝都にて死亡を確認。現在帝都の混乱は収束しつつある』
そんな、馬鹿な。
あのあやめ姉さんが。
一体帝都で何があったっていうの!
今すぐにでも帰国したいところだが、仕事はまだ残っている。
この任務はそうそう引き継げるものではなかった。
何よりも、途中で任務を投げてしまったらきっとあやめが怒るだろう。
今は、泣く時ではない。
それから必死で任務を終え、帝都に戻れたのはその年の冬の終わり。
姉の上官にあたる米田中将からの呼び出しでミカサ公園に出向いた。
「藤枝かえで、到着いたしました」
「おう、帰国早々に悪いな」
かえでの敬礼に応じながら米田が正面に立つ。
「私にお話というのは?それに此処は・・」
「此処はなぁ、あやめくんの死んじまった場所さ」
「・・姉さんが、此処で・・・」
米田の後ろには花組の総意で作られたあやめの墓があった。
敢えて、この場所でかえでに一つの辞令を出す。
「これは正式な辞令じゃねぇ。俺の頼みだ」
「頼み・・ですか」
「俺と、あやめくんの頼みだ。こんな事を言うのはずるいかもしれんが」
米田はかえでに一通の手紙を差し出しながら言った。
整った綺麗な字で『藤枝かえで様』と書かれている。
かえでにとっては見慣れた、あやめの筆跡だ。
便箋一枚でかえでに宛てた手紙が綴られている。
かえでへ
貴女がこれを読んでいるという事は米田中将に会ったのね。
そして、私はもう貴女に会えなくなっているのでしょう。
もし、私に何かあった時、貴女にお願いがあるの。
私の後を継いで帝国華撃団の副司令になって欲しいのよ。
かえでは優しくて、努力家で、強いもの。きっと大丈夫よ。
本当はこんな形で頼む事ではないんだけど、ごめんなさいね。
藤枝あやめ
追伸
米田中将は放っておくとお酒を飲みすぎるから
しっかり見張っておいてね。(これは内緒よ)
「藤枝かえで中尉。君に帝国華撃団副司令の任を頼みたい」
言って米田は頭を下げる。
「・・・承知致しました。精一杯務めさせて頂きます」
手紙を読み終えたかえでは確かな意志を持って答えた。
そして、華撃団の前に彼女が姿を見せるのはもう少し後の話・・。
ずるいじゃない、姉さん。
私がきっと断らないって知ってるくせに。
きっとしっかりやってみせるわ。
華撃団のお世話も、米田司令の見張りも、ね。
あとがき的なもの
かえでさんが帝撃の副司令になった時ってどんな風だったのか。
勝手に想像して書いたらこうなりました←
あやめさんはきっと手紙とか残してそうだと。
そして、かえでさんはあやめさんの頼みなら断らないと勝手に思ってます。
米田の「俺の頼み」って部分は思いっきりスルーしてます。
司令のお酒見張りは、実際大神くんもやってますよね。
かえでさんだと口で言う前に取り上げそうです^^
神剣白羽鳥のあたりもいつかSSに書いてみたいなぁ。
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