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どのくらい時間が経ったのだろう。
気が付くと外には月が浮かんで暗くなった部屋を照らしていた。

ふと目が覚めると、すぐ傍に人の気配が感じられる。


「マリア・・・?」
「お加減は如何ですか、副支配人」

先程、感情に任せて部屋から追い出してしまったマリアだった。
驚きと申し訳なさががかえでの中で混ざり合う。

「あの、さっきは・・」
「申し訳ありませんでした。思慮が足りずに不快な思いをさせてしまって」

ごめんなさい、と言おうとした矢先。
マリアが自分の言葉を遮るようにして謝ってきた。
彼女に非は無いのにと思いながらかえでも言葉を返す。

「貴女は悪くないわ。ごめんなさい、心配してくれたのに」

「貴女をあやめさんと同じとは思っていません。似ていると思うのは確かですが」
「ただ、心配なんです。あの人も私たちに弱い所を見せなかった」

そういえばそうだった、とかえでもふと思い出す。
姉も自分も藤枝の者として、強くあるよう求められてきた。
だが、マリアは何故それだけでこんなにも心配してくれるのか。

「マリア、貴女は何故そこまで私や姉さんの事を気にかけてくれるの?」

自分でも意地の悪い質問かと思ったが、マリアは真剣な目でそれに答えた。

「私は、あやめさんの事が好きでした。尊敬でもあり、恋愛感情だったのでしょう」
「こんな事を言うのはどうかと思うのですが、私は今でも彼女の事が好きで、でも・・」

「・・でも?」

「貴女の事も・・好き、なんだと思います」

「え、マリア、それは・・」
「貴女があやめさんに似てるからじゃなく、ですよ」

「貴女は、私の事をどう思いますか?かえでさん」


驚いて、事を理解するのに数秒を要した。
皆とは違い、徹底して副支配人と呼んできた彼女。
そんな彼女が今、自分を名前で呼んで、しかも告白してきたなんて。

自分は、どうだろう。

「・・今は、少し答えを待ってもらえるかしら」
「構いません。貴女の答えがどちらでも、私の気持ちは変わりませんし。」

「そろそろ失礼します。ゆっくり休んでくださいね」
「ええ。ありがとう、マリア」

何処か自信ありげな顔で退室する彼女を見送りながら思う。
ああ、何故彼女はこんなにも余裕なのか。
きっと自分は今顔を真っ赤にしてるんだろうに。

・・・ゆっくりなんて、休めるはずないじゃない。



あとがきのようなもの

お久しぶりです。
後半は頑張って早くアップすると言いながら一ヶ月。
しかもまだかえでさん答え出してないし←

マリアは自信あるんです、きっと。
かえでさんはこの後色々考えてちゃんと答え出します。
考えちゃって休めない副支配人、風邪が長引くんじゃなかろうか。

ちょっと迷っています。
このまま続きで完結させるか、別の話として書くか。
流れは出来てるんで後は文章にするだけなんですけども。
もし宜しければサイトを見て頂いてる方々の意見も伺ってみたいな、と。

御意見ありましたらメールフォームから一言お願いします^^
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出張から戻ると皆が出撃していると聞かされた。
そのまま自分も出撃したので、彼女ときちんと顔を合わせたのは帰還後だった。

「貴女がマリアね。初めまして、藤枝かえでです」

・・・とても、似ている。

「マリア・タチバナです。宜しくお願いします、副司令」
「こちらこそ、宜しくね」

声、外見、纏っている空気。
――そして、その笑顔までもが。


皆も驚いたようで、初めこそ戸惑ったもののすぐに慣れたらしい。
恐らく彼女の親しみやすい空気によるものだろう。
彼女自身も帝劇に慣れて副支配人と副司令という仕事を上手くこなしている。

そんな頃、偶然階段で彼女とすれ違った。
正確には彼女が私の前で足を踏み外したのだが。

「・・きゃっ!」
「副支配人!」

かろうじて彼女を受け止め、驚く。
明らかに高熱だ。

「何故、そんな状態で仕事をしてたんですか?」
「だって、私の自己管理不足で仕事を遅らせたり出来ないでしょう?」
「・・・・。今日の仕事は、後どのくらい?」
「この書類を支配人に提出して最後だけど・・」
「なら、それは私が届けておきますから、休んでください」
「私の仕事だもの、そんな訳にはいかないわ」

やはり、というかこういう所もそっくりだ。
自分に厳しく、意外と頑固なのだ。
仕方ないので些か強引にかえでの部屋まで抱えて運ぶ。

「マ、マリア!?ちょっ、降ろして頂戴!」
「いいえ。駄目です」

きっと、降ろしたらその後また休む機会が無くなってしまうだろう。
彼女の部屋の扉を開け、ベッドに寝かせる。
流石にもう観念したようで、抵抗される事は無い。
タオルと水を入れた桶を持って戻ると困ったような顔で言われた。

「本当に、書類を届けたら休むつもりだったのよ」
「届けついでに仕事を頼まれたら、それもやろうとしますよね?」
「・・・どうしてそう思うの?」
「あやめさんも、そんな人でしたから」


あまり言いたくは無かったけれど。
予想通りの反応が返ってきた。

「私と姉さんが全く同じって思ってるの!?」
「そんな事は・・っ!副支配人!」

口調を荒げたせいで咳き込んだ彼女を慌てて宥める。

「落ち着いて下さい。少し休まれた方が・・」
「少し、一人にして頂戴。マリア」
「・・・分かりました。失礼します」

彼女がああいうなら今は仕方ない。
その場を辞しながら、思わず後悔した。
何故あんな言い方をしてしまったんだろうか。
折を見て謝らなくては、と思いながら自室へ戻った。


彼女が退室した後。
しばらく天井を見ながら思いを巡らせる。

昔からそうだった。
優秀だった姉とそれに劣る自分と。
比べられて、重ねられて。

(姉さんもそんな人だった、なんて)

思わず勢いであんな事を言って追い出してしまったが、しかし。
彼女がそんな人じゃない事くらいは、分かっていた。
悪い意味で言っている訳ではないのだ。
ただ、純粋に心配してくれただけなんだと思う。

「私ったら、なんて事・・」

ああ、今度会ったら謝ろう。
部屋を出る時の彼女の痛そうな表情を思い出して罪悪感に苛まれる。
そうして考え込んでいる内に、いつの間にか意識を手放してしまっていた・・。



あとがきのようなもの

ちょっとバタバタしてまして、更新がすごく遅れてしまいました。
そしてさらに、今回は話を分けました。
いつもガーッと書いて、載せてみたら意外と長くなったりするので。
この話は、かえでさんとマリアにまだ壁があります。
続きで壁が壊れるようにするつもり(勿論!
マリアが副司令って呼んでるのはあやめさんを意識しちゃうから、みたいな。
かえでさん、姉さんみたいにやろうとして頑張りすぎたって感じで。

後半は早く更新できるように頑張ります!

日本、帝都。
数日前から久しぶりに故郷に戻ってきていた。
とは言え、明日にはまた欧州へ戻ってしまう。

だが、かえでは姉の呼び出しを受けて実家に向かっている。

(姉さん、わざわざ実家に呼ぶなんてどうしたのかしら・・?)


「ただいま。姉さん、居る?」
「あら、かえで。お帰りなさい。久しぶりね」
「姉さん!わざわざここに呼ぶなんてどうしたの?」
「・・・とりあえず、部屋まで来てもらえるかしら」

要領を得ないまま、あやめの部屋まで連れ立って歩く。
部屋に入って一息つくと唐突にあやめが切り出した。

「今、帝都で起こっている事は貴女も知ってるわよね」
「ええ。降魔が出たんでしょう?昔みたいに」
「そう。それでね、かえで。貴女にお願いがあるのよ」
「私に、お願い?」
「貴女に、白羽鳥を預かっていて欲しいの」
「え・・姉さん、それは・・」

藤枝家は二剣二刀の一つ『神剣白羽鳥』を代々受け継ぐ。
元より霊力を持つ者が多く、『藤の一族』と呼ばれる名家である。
そして姉あやめは、白羽鳥を継ぐ者、藤枝を継ぐ者として育てられてきた。

そんな姉が白羽鳥を預かってくれ、などと。

「嫌な予感がするのよ・・杞憂ならそれに越した事は無いんだけど」
「それなら、ここに預けておけばいいんじゃない?」
「ここにあるより、貴女が持っていた方がいい気がするの」

そして、あやめはとんでもない事を口にした。


「もし、私の身に何かあったら。貴女がこれを継いで」
「何言ってるの、姉さん!継承者は姉さんなのよ!?」
「だから、何かあったらよ。私に次いで霊力が高いのは貴女でしょう?」
「そうだけど、でも!!」

姉の身に何か、なんて考えたくも無い事だ。

「こんな事言いたくはないけど」
「これは姉としての頼みであって、神剣白羽鳥継承者としての頼みでもあるのよ」
「白羽鳥継承者の、頼み・・」

普段はそんな言い方をしないあやめが。
「継承者」で「後継」という力を誇示するような言い方を嫌う人が。
あえてその言葉を使ってまで、頼んでいる。

それを、断るなんて。
かえでには、出来ない事だった。

「継承者として、貴女に神剣白羽鳥をお預け致します」
「・・・確かに。お預かり致します」

その部屋に、静寂が訪れる。
張り詰めていた空気が僅かに緩んだ時、あやめが言った。

「ごめんなさいね。渡すなら此処でと思ったから・・」
「本当に、預かるだけなんだからね?解決したら連絡して頂戴」
「ええ。勿論その時はちゃんと伝えるわ」

かえでは、時計を気にしながら立ち上がって、

「姉さん、私そろそろ戻らなきゃ。明日また欧州へ戻るのよ」
「あら、ゆっくり雑談も出来なかったわね」
「でも姉さんも用が済んだんだし、帝都に戻るでしょう?」
「そうね。じゃあ、帝都までは一緒に行きましょうか」


そうして、あやめが支度を整えるのを玄関で待つ。

(そういえば、二人がそろって玄関を出るなんて随分久しぶりだわ)

ふと、そんな事を考えながら少し気恥ずかしくなる。
姉の隣を歩くのは子供の頃から数えても少なかったと思う。

「お待たせ、かえで。行きましょう」

それから駅までの道、列車の中、かえでが宿泊しているホテルの前まで。
数年ぶりの姉妹水入らずである。

ホテルの前まで来た時、あやめが口を開いた。

「それじゃ、かえで。仕事頑張って。白羽鳥の事お願いね」
「ええ、姉さんも。大変みたいだけどあまり無理はしないでね」

ありがとう、じゃあね。と言いながら帝劇の方へ向かいかけるあやめ。
その背に向かってかえでは思わず呼び止める。


「姉さん!」
「なぁに?かえで」

神妙な顔をしている妹に驚きながら振り返る。

「・・・御武運を」

敬礼しながら言うかえでに、あやめも敬礼を返す。
そして再び帝劇の方向へ歩き出した。
かえでもまた、あやめを見送ってからホテルに入る。

それぞれに、強い想いを抱えながら。

(貴女を、貴女の居るこの帝都を、守る)

(大丈夫よ。姉さんは強いもの。ねぇ、白羽鳥?)



あとがき的なもの

えー、藤枝姉妹でございます。
2でかえでさんが白羽鳥持ってたからちょっと想像したら。
きっとあやめさんが直に預けてるんだ!なんて思って。
ちょっと展開が急ぎすぎでしょうかね・・。
短くても、愛はあります、愛は!←
どうしてもシリアス路線に走ってしまいますねー。
でも、姉妹はお互いの事をちゃんと考えてるんだって話が書きたかった。

時間軸は夢に殺女が出始めた頃か、その直前くらいか。
はい、あやめさんの予感は当たってしまいますーー;

10月21日。
爽やかな秋晴れに恵まれた日の大帝国劇場。
サロンに花組が集まり何やら相談している。


「かえでさんとマリアは出掛けたかい?」
「夕方までは戻らないと伺いましたわ」
「はーい!アイリスね、ケーキ作る!」
「私もそれを手伝いまーす。レニもそれでいいですかー?」
「うん、了解」
「ウチはさくらはんと考えがあるんや」
「もう少しで完成なんです。ね、紅蘭」
「あたいは料理かな。とっておきの沖縄料理をご馳走するぜ」
「私は、飾り付けですわね。プレゼントはもう用意してありますの」

それぞれが役割分担して慌しく動き始めた。
ふと、すみれが後ろを振り返り大神に尋ねる。

「ところで、少尉はどうなさいますの?」
「俺は今日のかえでさんの仕事を請け負ったんだ」
「そうですの。頑張って下さいね」
「ああ。時間があれば飾り付けを手伝うよ」
「まぁ、それは助かりますわ。では少尉、後ほど」


厨房からはアイリス達の楽しげな声や、カンナの軽快な包丁の音が。

「綺麗に焼けましたねー!完璧でーす!」
「ね、レニ。クリームってこれ位でいいかなぁ?」
「うん。そうだね。こっちもフルーツ切れたよ」
「じゃあ、デコレーション開始でーす!」

「よーし、ゴーヤはこんなもんか。これで炒めて完成だな」

紅蘭の部屋からは幾度かの爆発音とさくらの悲鳴が。

「きゃあ!今度は何!?」
「あっちゃー、ここの配線間違うてるわ。これはこっちで・・」

そんな喧騒をBGMに支配人室では大神が必死でペンを走らせて。

「かえでさん、いつもこんなにこなしてるのか・・」
「あやめくんもそうだったが、優秀だからなぁ」
「・・よし、これで最後だ!」
「お、終わったか。じゃ、俺はマリアに連絡しとくぜ」

楽屋ではすみれが飾り付けに勤しんでいる。

「テーブルはこんな感じですわね。高い所は少尉にお願いしようかしら」
「すみれくん、手伝いに来たよ」
「まぁ、少尉!丁度いい所にいらっしゃいましたわ!」


一方、かえでとマリアは・・

「すみません、かえでさん。買い物に付き合わせてしまって」
「いいのよ。私も久しぶりに色々まわれたし」

―――ピピピピッ

「あら、キネマトロンに通信?」
「えぇ。そのようです。ちょっと失礼します」

『マリアかぁ?米田だが。』
「支配人。では、もうそろそろですか?」
『おう、もうじき準備が終わるからそろそろ帰って来い』
「了解しました。ではこれから戻ります」

かえでに聞かれないように少し離れて通信を受ける。
時計は4時を示しており、確かに帝劇に戻るには丁度いい時間だった。
キネマトロンの通信を切りながら急いでかえでのところへ戻る。

「あ、マリア。通信は何だったの?」
「米田支配人です。暗くなる前に帰って来いと」
「随分過保護ね、支配人ったら」
「まぁ、のんびり戻りましょう。そんなに遠くありませんし」


そして、帝劇では丁度その頃全ての準備が終わった所だった。

『出来たー!!』

「かえでお姉ちゃん喜んでくれるかな?」
「当然でーす。私が手伝ったんですからねー」
「頑張ったね、アイリス」

「うん、出来た!楽屋まで持ってかねぇとな」

「よっしゃ、出来たでさくらはん!名付けて「お疲れ様くん」や!」
「よかったー。間に合ったわね、紅蘭!」

「すみれくん、こんな感じでいいかい?」
「結構ですわ。これで完成ですわね」

「おーい、おめぇら!かえでくん達が帰ってくるぞ!!」
『はーい!!』


「思ったよりのんびり帰りすぎたかしら?」
「いいえ、大丈夫だと思いますよ」

マリアが玄関の扉を開けながら言う。
かえでは首を傾げながら視線をそちらへ向ける。
扉の先には花組が勢ぞろいで待っていた。

『かえでさん、お誕生日おめでとう!!』

すっかり忘れていたらしい当の本人は目を丸くして驚いている。

「誕生日おめでとうございます、かえでさん」
「おめでとう、かえでくん」

マリアと米田が花組の後に続き、そこでようやく思い出したかえでが満面の笑みを浮かべた。

「ありがとう、皆」

そのまま楽屋へ移動し大宴会。

「ケーキはね、アイリス達が作ったんだよ!」
「あたいは沖縄料理だ。ゴーヤチャンプルーって言うんだぜ」
「私と紅蘭からは「お疲れ様くん」です」
「書類なら全部終わらせましたから、大丈夫ですよ」
「私からのプレゼントはお酒ですの。日本酒とか洋酒、色々ありますわ」


皆が食べて、飲んで、騒いで。
その日、帝劇の明かりが消えたのは随分と遅い時間だった。
部屋で日記を書いていたかえでは控えめなノックの音に顔をあげた。

「どうぞ、開いてるわよ」
「夜遅くにすみません」
「・・・・やっぱりマリアね」
「分かっていたんですか?私が来るって」
「何となく、ね。貴女一人だけ何もしないなんて事ないでしょう?」

かえでは笑顔でマリアを迎えた。
マリアもまた笑顔で花束を差し出した。

「誕生日、おめでとうございます」
「・・・・ありがと。せっかくだし、少し飲んでいかない?」
「あら、すみれに貰ったワイン。いいんですか?」
「だって、一人で飲んでしまうには勿体無いんだもの」

――それに、誰かと一緒に飲んだ方が美味しいでしょ?



あとがき的なもの

『白鷺遊戯』様のイラストを見て思いついたSSです。
かえでさんの誕生日に花組がこっそりパーティー企画。
紅蘭の発明品の名前は勝手につけちゃいました←
米田さんは知ってて黙ってたんですよ。
かえでさんは仕事で忙しくて自分の誕生日忘れてた、と。
会話メインの話にしてみたんですが・・読みづらいでしょうか^^;

拙いですが、相互リンクしていただいたお礼も兼ねて『白鷺遊戯』様に献上致します。

春先の銀座、大帝国劇場。
夜も更けて随分と遅い時間である。

2階のテラス、一際大きな窓の前に一人の青年の姿がある。
帝国華激団隊長、大神一郎。
いつも朗らかな彼にしては珍しく思い詰めた顔で月を眺めていた。
手には一丁の拳銃が握られている。


撃った。
あの日、命令だとまで言われて。
俺は貴女に託されたこの銃で貴女を、撃った。

不発であればとどんなに思ったか。
しかし無常にも引鉄は正しく作用した。

あの時のまま、拳銃には数発の弾が装填されている。

今この引鉄を引いて自分を打ち抜けば、俺は貴女に逢えるだろうか。
そう思いながら頭に銃口を当ててみる。

「・・大神くん?」

弾かれたように振り返ると怪訝そうな顔で藤枝かえでが立っていた。

「どうしたの、こんな時間に」
「ちょっと寝付けなくて・・かえでさんこそどうなさったんですか?」
「喉が渇いちゃってね、飲み物を取りに」

もしかして、見られてしまっただろうか。

「その、大神くん?貴方が今持ってるのは・・」

やはり、見えてしまったようだ。
隠しきれるものでもないと大神は観念して拳銃を出した。

「聞いて、いただけますか」


二人はサロンに移動して向かい合って座る。
テーブルには、あやめの拳銃を置いて。

「かえでさんは、あやめさんの最期、聞いていますか?」
「え?最期は帝都の為に・・って」

本当はこんな事、言うべきじゃないんだろう。
俺の独断で周りのかえでさんに対する気遣いを壊すかもしれない。

「俺が、撃ちました」
「直前にあやめさんからこれを託されて」
「俺がこの手で、あやめさんを、撃った」

句切りながら、ゆっくりしかし確実に。
彼女に真実を告げていく。
姉の命の灯を消したのは今目の前に居るこの男だと。

赤い月を忘れる事が出来ない。
俺が貴女を撃ってしまったあの時の感覚が戻って来るようで。
俺とさくらくんを最期に庇ったあの人が見えるようで。


「姉さんは、敵として死んだんじゃない。藤枝あやめとして死んだのね」

「あやめ姉さんの事、忘れないで居てくれるのね」
「忘れるなんて、出来ません。俺は・・」
「苦しまなくていいわ、大神くん」

「貴方が後を追っても、姉さんは喜ばないわ。そうでしょう?」
「・・・はい」

ああ、そうか。
俺に出来るのは貴方の遺志を継いで帝都を守っていく事だ。
此処で、貴女が好きだったこの場所で。

すみません、あやめさん。
俺は忘れるところだった。
貴女から託された大事なものを。

『こぉら!なんて顔してるの?しっかりしなさい、大神くん!』

ピシッと音がしてかえでが大神の額を弾く。
いつか、あやめがそうしたように。
まるで二人が同時に言ったように聞こえて大神は驚く。

「はい。すみません、もう大丈夫です」
「ん、よろしい」

かえでが笑顔で応じるその後ろにあやめが微笑んでいたような気がした。

(しっかりね、大神くん)

大丈夫です。俺は、もう大丈夫。
見ていて下さい、あやめさん。



あとがき的なもの

赤い月、大神さん視点。
『』の台詞は2人の声が被ってる感じで。
私はあのシーンであやめさんを一度撃ちました。
さすがにそれ以降は無理でした(だって、ねぇ

あやめさんを、藤枝あやめっていう人として留めてあげたかった。
それが正しいとは言い切れないんですが。

かえでさんは姉が敵の手に堕ちきった訳ではないと知って安心、みたいな。
あ、因みにかえでさん視点との時間軸の関係はご自由に。
ちょっと強引ですがどっちでもいけそうな感じなので。

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